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製造業における生産性向上の重要性とは?

~製造業の生産性向上は待ったなし!取り組むべき理由やメリット、手順、低下する要因と対策を解説~
“蓄積されたノウハウを活かし、最適なシステムをトータルサポート”として様々なソリューションを提供している住友電設情報通信システム事業部が、製造業等に向けて様々な情報をお届けしたいと思っております。
日本の生産性は先進国中最低だと言われていますが、今後重要性が高まっている“生産性向上”について基本的な考え方をお伝えしたいと思います。
■目次
1. 製造業における生産性向上とは?
2. 製造業における生産性向上のメリットは?
3. 生産性向上を怠ることで起きること
4. 生産性を低下させる原因と対策
5. 生産性を向上させるためのポイント
6. まとめ
1. 製造業における生産性向上とは?
日本は世界的に見ても労働生産性が低いと言われており、公益財団法人日本生産性本部生産性総合研究センターの調べによれば、2023年時点で日本の製造業の労働生産性はOECDに加盟する主要34カ国中19位です。日本の順位は、2000年にOECD諸国でトップだったものの、その後をみると2005年に9位、2010年に10位へと落ち込み、2015年以降をみると17~19位で推移しています。今後は少子化が進むことによってさらに人手不足が加速化すること予想されており、企業として生産性向上に取り組まないと人材不足で立ちいかない可能性があります。
企業として国際的な競争優位性を保ち、限られた人材で最大限の利益を上げるためには、生産性向上が急務なのです。
(参考)公益財団法人日本生産性本部:https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/summary2024.pdf
また日本の製造業もグローバル化してきており、製造拠点の海外移転、はたまた海外メーカーの日本への進出、サプライチェーンの広域化、材料調達の世界化など、製造業をめぐる社会情勢はめまぐるしく変化しています。そんな中で製造業にとって「生産性の向上」は、今後の会社の将来を左右する最重要項目と言っても過言ではありません。
もちろんそんな事業環境はわかってはいても、「何から手を付けたらいいのかわからない」「具体的な取り組みのプロセスが分からない」という方もいるのではないでしょうか。
今回は、製造業における生産性の向上の定義やメリットに加え、生産性向上を進めるポイントもご紹介していきます。

製造業における生産性向上とは、投入する労力や時間、原材料などの資源を最小限に抑えながら、より多くの製品・価値の高い製品を生み出すことを指します。言い換えると、事業内を効率化することによって利益を最大化していくことです。
主な生産性向上の中で効率化の方法は下記のようなものがあります。
● 原材料や作業・製品のムリ・ムダ・ムラを分析し、不要な工程の省略や精度を向上させる
● 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を徹底する
● SOP(標準作業手順書)を改善する
● ITツールや設備を導入・アップデートする
● 従業員の多能工化を推進する
● 従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める
● デジタル技術を活用して自動化を図る
それ以外にも、製品の付加価値を上げることで一つ当たりの単価を上げることや、小ロット・多品種を少ない設備投資で行うことなども考えられます。
2024年7月のキャディ株式会社の「製造業の調達実態調査」によると今後の製造業で重要度が増す外部環境の変化やリスクとしてこれまで1位だった人手・労働力不足を抑えて「調達コストの上昇(72.2%)」が圧倒的な1位となっております。これはアメリカと中国の貿易摩擦などの影響もあり資源調達がリスク要因になっていることがうかがえます。

※出典:キャディ株式「キャディ 製造業の調達実態調査」:https://caddi.com/press/20240724/l
調達コストの上昇は生産性の向上に大きな影響を与えますが、国際的な課題も大きく1企業が対策できることは限られます。調達コストを抑えることが難しい場合は、その他の部分でコストを抑える必要がありますので、必然的に無駄の削減や効率化が重要になってきます。
2. 製造業における生産性向上のメリットは?
生産性向上のメリットは多岐にわたります。主なものとしては、以下のようなことが挙げられます。●
● コスト削減
人件費や原材料費などのコスト削減が可能になり、利益の増加につながります。
● 納期の短縮
生産効率を向上させることで、製品の納期を短縮することができます。
● 品質向上・安定
ムリ・ムダを減らすことで、製品の品質を向上・安定させることで歩留まり率の改善や原材料のコスト削減などに繋がります。
● 顧客満足度の向上
納期の短縮や品質向上により、顧客満足度を向上させることができます。
● 競争力の強化
コスト削減や納期短縮、品質向上などにより、競争力を強化することができます。
上記のようなメリットは、単体として出てくることですが、複合的に考えると短納期や品質向上等が図れることで、製造ラインに余裕が出てくることで今まで受注できていない顧客開拓が可能になったり、顧客満足度の向上や競争力の強化により新規顧客の紹介をいただけたり、従業員の負荷が低減することで、新たな施策を行うことで新しい商品開発や、事業開発等を行うことも可能になってきます。
現在の少子高齢化は短期間で解消されるものでもなく、今後も一層就労人口の減少が続く予想です。人手不足や人材不足というネガティブな要素が発端となって生産性向上をしなくてはいけないと考えるのではなく、企業の持続的な成長を見据えて生産性の向上を図ることで新たな未来を見えるようにするというポジティブな動機で進めていくことが最も大切なことです。
3. 生産性向上を怠ることで起きること
製造業の生産性向上を図るためには、生産性低下を招く要因を理解することも大切です。なぜなら生産性の向上は何か一つシステムを導入すれば終わりのようなものではなく、どちらかと言えば地道にコツコツと細かいことを積み重ねていくことの方が重要だからです。
そこで生産性向上を怠ることで起こる主な3つ現象について解説していきます。
● 生産性向上に割く時間を作れない
生産性を向上させていくためには人材育成や個々の従業員のスキルアップなどが欠かせません。しかし社内が人員不足やスキル不足の状態だと、どうしても目の前の生産に追われ人材育成やスキルアップに時間を割くことができなくなります。結果として生産性向上のための大切な教育機会が失われ、いつまでたっても生産性向上が図れない状態が続くことになります。
生産性向上に向けた取り組みが進ず個人の力量に任せることは、従業員のスキルや知識量の差が生まれて結果として作業品質にばらつきが生じたり作業時間の無駄が生じたりします。例え新しい人材を採用しても経験や知識の浅い従業員を育成できる仕組みがないと、不良品の発生や作業品質の不安定などの問題が生じベテラン社員がその穴埋めをすることになりますます生産性が悪化してしまい、企業の大きな損失にもつながりかねません。
● ミスや無駄な作業が発生する
生産性向上の意識や取り組みがない状態だと、作業ミスや発注ミスが発生します。このこと自体も無駄な作業ですが、さらにそのミスをカバーするための作業やミスを防ぐための確認作業等のミスが発生しなければ必要としない作業が発生します。無駄な作業が多いと確認の手間が増えるほか、作業効率が著しく悪化するため生産性は低下します。特に発注ミスは企業の費用を浪費してしまい、コスト増加にもつながるため、部品調達や在庫管理を徹底して行うことが重要です。
また習慣化している作業などにおいては、本来取り組む必要がないのに「いつもしていることだから」と従業員が惰性で行っているような無駄な作業がある場合があります。さらに、機械やシステムでできる事を手作業で行っているなど非効率な作業もありうるうえ、非効率な作業を強いることで従業員への負担が増加し、その影響による必要とないミスの発生にもつながるという悪循環に陥りやすいです。「これって本当に必要?」という意識から始まり、どこか少しでも生産性を上げられる要素がないかを“考える癖”が重要です。なぜなら、人は現状維持バイアス(変化を嫌う考え)が強く働くので、変化に対する重要度を上げない限り惰性で今の状態を続けることになります。
● 部門・従業員間の意思疎通
製造業では製品を作っていく過程において複数の部門協力しながら業務に取り組むことも多いです。そのため部門間や従業員間で情報や進捗状況をこまめに確認しながら課題や問題に素早く対処するなど、円滑なコミュニケーションが非常に重要になってきます。
コミュニケーション量の不足や、質が担保できないと部門間で情報共有がスムーズにいかないことや、伝達内容に齟齬が産まれる事で余計に時間が必要になり、作業の途中停止や連絡ミスなどの不備が起き、生産性低下や生産の大きな損失につながるケースがあります。ただ単に従業員間の感覚でコミュニケーションを考えるのではなく、共通言語化作りやコミュニケーションの機会の創出等仕組みとして行っていくことで質の担保も確保していく必要があります。
上記の3つは、それぞれ「生産性向上に割く時間を作れない=成長機会不足」「ミスや無駄な作業が発生する=改善意識不足」「部門・従業員間の意思疎通=コミュニケーション不足」と言えます。この3つが不足することで生産性の低下に陥ってしまいます。
4. 生産性を低下させる原因と対策
生産性を低下させる原因は上述した3つの要因以外にも以下の2つがあります。
● 資源不足
製造業は労働集約的な場面が多く、人手や資材が不足するとそれだけで生産性が低下します。人材確保や適切なタイミングでの資材の確保が重要になります。例えば、機器の組み立てをするラインで作業員が足りない場合、それぞれの工程で遅れが生じることで、最終的には出荷自体が遅れる可能性があります。これを防ぐためには、適正な人材と人員数を割り出して過不足が無いような体制作りが重要です。まずは適正な数の把握が必要となります。
● 標準化不足
作業や業務の標準化が適正に行われていない場合、作業者によって品質や作業速度にバラつきが生じるため生産性の低下を招きやすくなります。また作業や業務の手順や方法が定型化や標準化されてないと、新人や慣れていない作業者が作業を覚えるのに時間がかかりばかりでなく、ミスも多くなることもあります。
例えば、ある工程で使う部品の取り扱い方法がマニュアルで明確化されていないと、作業者はその部品を扱う度に確認をする必要があり、全体的な作業の遅延やミスを引き起こす可能性があります。また、標準化をしていないと、作業者に委ねられるため、ブラックボックス化されやすく、その人材の退職等でいきなり作業が進まなくなることもあります。もちろん職人技が必要な作業もあるとは思いますが、できる限り標準化(マニュアル)を作成して誰もが一定のレベルで作業や業務ができるようにしていく必要があります。
キャディ株式会社のキャディ調査レポート 属人化リスクとAI活用編】では『製造業従事者の98%が所属する部署において、「特定の人しか分からない作業・判断」が存在すると回答』されており、『「特定の人しか分からない作業・判断」が原因の損失はありますか』との質問で「ない」との回答はわずか2.3%です。最も多いのは「手戻り・再計算」の29.4%、品質劣化も19.5%となっており、
業務の属人化はコスト上昇につながるので標準化は重要な要素になります。

※出典:キャディ株式会社【キャディ調査レポート 属人化リスクとAI活用編】:https://caddi.com/press/20250918/
このような5つ不足は、それぞれが相関関係にあり、どれかが滞ることで負のスパイラル(悪循環)になりやすくなります。例えば、人が辞めることで人材が不足し、そこに新しい人材を入れたとしても標準化されておらずミスが多発、結果としてベテランがその対処に時間を取られ、ベテランも疲弊して退職してしまう。ベテランの退職でますますミスが多発し、新人もやめてしまうという悪循環が起こりやすくなります。
どれか一つを対処するのではなく、全てをまんべんなく不足を補っていくことが大事ですし、そのためには全社的に生産性向上に対する意識を高めていくことが最も大事になってきます。
5. 生産性を向上させるためのポイント
製造業で生産性向上を実現するポイントは、以下の4つの手順に沿った対策が有効です。
① 生産性を向上させる目的を確認する
② 業務を可視化し改善を実施する優先順位を決める
③ 具体的な施策を決定する
④ 業務システムやツールを導入する
① 生産性を向上させる目的を確認する
労働生産性をさらに向上させるためには、生産性を向上させることで実現したい会社の未来像を目的としてたて、具体的な目標を設定することが必要です。
例えば、よくあるのが「製品の不良率を翌年は5%削減する」という目標だけを設定しているケースです。もちろん、不良率を削減することは製品の品質を保ちながらコストの削減や生産性向上の実現が期待できるものです。しかし目的なく目標を設定してしまうと、目標達成自体が目的となってしまいそれ以外の部分に目が行きにくくなります。そのため、まずは生産性向上を図ることでどのような企業になりたいのかを定め、それを従業員全員がイメージできる形で決めることが重要です。そのうえで工程ごとに具体的な目標を設定すると、実際にその目標が重要でないことが分かった場合や、実現が難しい目標だと判明した際等に目的が明確であれば目標を素早く変えることもできます。目標は目的を達成するための通過点です。目標に柔軟性を持たせることが目的到達に対して有効は方法です。
② 業務を可視化し改善を実施する優先順位を決める
業務を見える化することは、業務の流れやボトルネックを明確にするためのはじめの一歩です。例えば製造機器の情報等をデータ取得してみると、人の感覚とは違う結果が出ることもあります。またデータ化しにくい事でもマニュアル化をする過程である人の能力に依存していることが分かったり、無駄な作業が発生していたりすることが分かります。このように業務を可視化することで改善の優先順位が分かりやすくなります。また例えばITツールを活用して業務内容をデータ化することで、作業時間や品質、設備故障などの情報を可視化し、データを取得して分析することで具体的な改善策を考えることが可能になります。さらに業務の可視化は改善による効果が分かりやすくなるので改善に踏み切る決定がしやすくなるというメリットがあります。
③ 具体的な施策を決定する
業務の可視化によってボトルネックや業務の問題点が明確になったら、次は具体的な施策の決定が必要となります。
例えば、現場の教育が挙げられます。業務の見える化から「新人の作業ミスが多い」という問題が浮き彫りになった場合、原因を解決するための施策として、業務のアニュアル化や、新人向けの教育プログラムの充実、ベテラン従業員によるOJTの実施などが考えられます。ここで大事なことは解決策を一つだと考えないことです。業務は独立して存在しているのではなく、ほぼすべてが他の業務や作業に関連しています。一つの方法が他の業務に影響することもあります。これだけしとけばよいと考えたり、一つの施策が上手くいかないからとあきらめるのではなく、常に「他に何か方法はないだろうか」と考えて施策を繰り返すことが大事です。
④ 業務システムやツールを導入する
これまでのポイントを踏まえて、現状の社会情勢を踏まえると生産性向上にシステム化やITは欠かせません。ただ、年齢によっては、ハードルが高いと感じる場合もあるかとは思います。また企業によってはITやシステムを使いこなす人材がいないと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし生産年齢人口の減少を踏まえて考えると生産性向上にはIT化やシステム導入は避けて通ることができないのが現実です。
もし自社内では使いこなせないと考える場合は外部人材の活用や外部のサポートを行うことも重要です。
6. まとめ
生産性の向上はこれからの製造業で生き残っていくために大事な要素です。特に生産性向上に取り組んでいる企業とそうでない企業では数年で見ると大きな差が出てきます。変化が激しく早い昨今の情勢を考えると、生産性向上に向けて全力で取り組みことが大事になってきます。IT化やツールの活用などは費用も掛かる施策でもありますので、上手く補助金や助成金を活用することも検討しつつ、今できる事からまずは取組んでいくことが大事ではないでしょうか。
今回のポイントを踏まえつつできる事から取り組み、必要な場合は外部リソース等も活用することも検討して企業の持続的な成長につなげていきましょう。
“蓄積されたノウハウを活かし、最適なシステムをトータルサポート”として様々なソリューションを提供している住友電設情報通信システム事業部が、製造業等に向けて様々な情報をお届けしたいと思っております。
日本の生産性は先進国中最低だと言われていますが、今後重要性が高まっている“生産性向上”について基本的な考え方をお伝えしたいと思います。
■目次
1. 製造業における生産性向上とは?
2. 製造業における生産性向上のメリットは?
3. 生産性向上を怠ることで起きること
4. 生産性を低下させる原因と対策
5. 生産性を向上させるためのポイント
6. まとめ
1. 製造業における生産性向上とは?
日本は世界的に見ても労働生産性が低いと言われており、公益財団法人日本生産性本部生産性総合研究センターの調べによれば、2023年時点で日本の製造業の労働生産性はOECDに加盟する主要34カ国中19位です。日本の順位は、2000年にOECD諸国でトップだったものの、その後をみると2005年に9位、2010年に10位へと落ち込み、2015年以降をみると17~19位で推移しています。今後は少子化が進むことによってさらに人手不足が加速化すること予想されており、企業として生産性向上に取り組まないと人材不足で立ちいかない可能性があります。
企業として国際的な競争優位性を保ち、限られた人材で最大限の利益を上げるためには、生産性向上が急務なのです。
(参考)公益財団法人日本生産性本部:https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/summary2024.pdf
また日本の製造業もグローバル化してきており、製造拠点の海外移転、はたまた海外メーカーの日本への進出、サプライチェーンの広域化、材料調達の世界化など、製造業をめぐる社会情勢はめまぐるしく変化しています。そんな中で製造業にとって「生産性の向上」は、今後の会社の将来を左右する最重要項目と言っても過言ではありません。
もちろんそんな事業環境はわかってはいても、「何から手を付けたらいいのかわからない」「具体的な取り組みのプロセスが分からない」という方もいるのではないでしょうか。
今回は、製造業における生産性の向上の定義やメリットに加え、生産性向上を進めるポイントもご紹介していきます。

製造業における生産性向上とは、投入する労力や時間、原材料などの資源を最小限に抑えながら、より多くの製品・価値の高い製品を生み出すことを指します。言い換えると、事業内を効率化することによって利益を最大化していくことです。
主な生産性向上の中で効率化の方法は下記のようなものがあります。
● 原材料や作業・製品のムリ・ムダ・ムラを分析し、不要な工程の省略や精度を向上させる
● 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を徹底する
● SOP(標準作業手順書)を改善する
● ITツールや設備を導入・アップデートする
● 従業員の多能工化を推進する
● 従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める
● デジタル技術を活用して自動化を図る
それ以外にも、製品の付加価値を上げることで一つ当たりの単価を上げることや、小ロット・多品種を少ない設備投資で行うことなども考えられます。
2024年7月のキャディ株式会社の「製造業の調達実態調査」によると今後の製造業で重要度が増す外部環境の変化やリスクとしてこれまで1位だった人手・労働力不足を抑えて「調達コストの上昇(72.2%)」が圧倒的な1位となっております。これはアメリカと中国の貿易摩擦などの影響もあり資源調達がリスク要因になっていることがうかがえます。

※出典:キャディ株式「キャディ 製造業の調達実態調査」:https://caddi.com/press/20240724/l
調達コストの上昇は生産性の向上に大きな影響を与えますが、国際的な課題も大きく1企業が対策できることは限られます。調達コストを抑えることが難しい場合は、その他の部分でコストを抑える必要がありますので、必然的に無駄の削減や効率化が重要になってきます。
2. 製造業における生産性向上のメリットは?
生産性向上のメリットは多岐にわたります。主なものとしては、以下のようなことが挙げられます。●
● コスト削減
人件費や原材料費などのコスト削減が可能になり、利益の増加につながります。
● 納期の短縮
生産効率を向上させることで、製品の納期を短縮することができます。
● 品質向上・安定
ムリ・ムダを減らすことで、製品の品質を向上・安定させることで歩留まり率の改善や原材料のコスト削減などに繋がります。
● 顧客満足度の向上
納期の短縮や品質向上により、顧客満足度を向上させることができます。
● 競争力の強化
コスト削減や納期短縮、品質向上などにより、競争力を強化することができます。
上記のようなメリットは、単体として出てくることですが、複合的に考えると短納期や品質向上等が図れることで、製造ラインに余裕が出てくることで今まで受注できていない顧客開拓が可能になったり、顧客満足度の向上や競争力の強化により新規顧客の紹介をいただけたり、従業員の負荷が低減することで、新たな施策を行うことで新しい商品開発や、事業開発等を行うことも可能になってきます。
現在の少子高齢化は短期間で解消されるものでもなく、今後も一層就労人口の減少が続く予想です。人手不足や人材不足というネガティブな要素が発端となって生産性向上をしなくてはいけないと考えるのではなく、企業の持続的な成長を見据えて生産性の向上を図ることで新たな未来を見えるようにするというポジティブな動機で進めていくことが最も大切なことです。
3. 生産性向上を怠ることで起きること
製造業の生産性向上を図るためには、生産性低下を招く要因を理解することも大切です。なぜなら生産性の向上は何か一つシステムを導入すれば終わりのようなものではなく、どちらかと言えば地道にコツコツと細かいことを積み重ねていくことの方が重要だからです。
そこで生産性向上を怠ることで起こる主な3つ現象について解説していきます。
● 生産性向上に割く時間を作れない
生産性を向上させていくためには人材育成や個々の従業員のスキルアップなどが欠かせません。しかし社内が人員不足やスキル不足の状態だと、どうしても目の前の生産に追われ人材育成やスキルアップに時間を割くことができなくなります。結果として生産性向上のための大切な教育機会が失われ、いつまでたっても生産性向上が図れない状態が続くことになります。
生産性向上に向けた取り組みが進ず個人の力量に任せることは、従業員のスキルや知識量の差が生まれて結果として作業品質にばらつきが生じたり作業時間の無駄が生じたりします。例え新しい人材を採用しても経験や知識の浅い従業員を育成できる仕組みがないと、不良品の発生や作業品質の不安定などの問題が生じベテラン社員がその穴埋めをすることになりますます生産性が悪化してしまい、企業の大きな損失にもつながりかねません。
● ミスや無駄な作業が発生する
生産性向上の意識や取り組みがない状態だと、作業ミスや発注ミスが発生します。このこと自体も無駄な作業ですが、さらにそのミスをカバーするための作業やミスを防ぐための確認作業等のミスが発生しなければ必要としない作業が発生します。無駄な作業が多いと確認の手間が増えるほか、作業効率が著しく悪化するため生産性は低下します。特に発注ミスは企業の費用を浪費してしまい、コスト増加にもつながるため、部品調達や在庫管理を徹底して行うことが重要です。
また習慣化している作業などにおいては、本来取り組む必要がないのに「いつもしていることだから」と従業員が惰性で行っているような無駄な作業がある場合があります。さらに、機械やシステムでできる事を手作業で行っているなど非効率な作業もありうるうえ、非効率な作業を強いることで従業員への負担が増加し、その影響による必要とないミスの発生にもつながるという悪循環に陥りやすいです。「これって本当に必要?」という意識から始まり、どこか少しでも生産性を上げられる要素がないかを“考える癖”が重要です。なぜなら、人は現状維持バイアス(変化を嫌う考え)が強く働くので、変化に対する重要度を上げない限り惰性で今の状態を続けることになります。
● 部門・従業員間の意思疎通
製造業では製品を作っていく過程において複数の部門協力しながら業務に取り組むことも多いです。そのため部門間や従業員間で情報や進捗状況をこまめに確認しながら課題や問題に素早く対処するなど、円滑なコミュニケーションが非常に重要になってきます。
コミュニケーション量の不足や、質が担保できないと部門間で情報共有がスムーズにいかないことや、伝達内容に齟齬が産まれる事で余計に時間が必要になり、作業の途中停止や連絡ミスなどの不備が起き、生産性低下や生産の大きな損失につながるケースがあります。ただ単に従業員間の感覚でコミュニケーションを考えるのではなく、共通言語化作りやコミュニケーションの機会の創出等仕組みとして行っていくことで質の担保も確保していく必要があります。
上記の3つは、それぞれ「生産性向上に割く時間を作れない=成長機会不足」「ミスや無駄な作業が発生する=改善意識不足」「部門・従業員間の意思疎通=コミュニケーション不足」と言えます。この3つが不足することで生産性の低下に陥ってしまいます。
4. 生産性を低下させる原因と対策
生産性を低下させる原因は上述した3つの要因以外にも以下の2つがあります。
● 資源不足
製造業は労働集約的な場面が多く、人手や資材が不足するとそれだけで生産性が低下します。人材確保や適切なタイミングでの資材の確保が重要になります。例えば、機器の組み立てをするラインで作業員が足りない場合、それぞれの工程で遅れが生じることで、最終的には出荷自体が遅れる可能性があります。これを防ぐためには、適正な人材と人員数を割り出して過不足が無いような体制作りが重要です。まずは適正な数の把握が必要となります。
● 標準化不足
作業や業務の標準化が適正に行われていない場合、作業者によって品質や作業速度にバラつきが生じるため生産性の低下を招きやすくなります。また作業や業務の手順や方法が定型化や標準化されてないと、新人や慣れていない作業者が作業を覚えるのに時間がかかりばかりでなく、ミスも多くなることもあります。
例えば、ある工程で使う部品の取り扱い方法がマニュアルで明確化されていないと、作業者はその部品を扱う度に確認をする必要があり、全体的な作業の遅延やミスを引き起こす可能性があります。また、標準化をしていないと、作業者に委ねられるため、ブラックボックス化されやすく、その人材の退職等でいきなり作業が進まなくなることもあります。もちろん職人技が必要な作業もあるとは思いますが、できる限り標準化(マニュアル)を作成して誰もが一定のレベルで作業や業務ができるようにしていく必要があります。
キャディ株式会社のキャディ調査レポート 属人化リスクとAI活用編】では『製造業従事者の98%が所属する部署において、「特定の人しか分からない作業・判断」が存在すると回答』されており、『「特定の人しか分からない作業・判断」が原因の損失はありますか』との質問で「ない」との回答はわずか2.3%です。最も多いのは「手戻り・再計算」の29.4%、品質劣化も19.5%となっており、
業務の属人化はコスト上昇につながるので標準化は重要な要素になります。

※出典:キャディ株式会社【キャディ調査レポート 属人化リスクとAI活用編】:https://caddi.com/press/20250918/
このような5つ不足は、それぞれが相関関係にあり、どれかが滞ることで負のスパイラル(悪循環)になりやすくなります。例えば、人が辞めることで人材が不足し、そこに新しい人材を入れたとしても標準化されておらずミスが多発、結果としてベテランがその対処に時間を取られ、ベテランも疲弊して退職してしまう。ベテランの退職でますますミスが多発し、新人もやめてしまうという悪循環が起こりやすくなります。
どれか一つを対処するのではなく、全てをまんべんなく不足を補っていくことが大事ですし、そのためには全社的に生産性向上に対する意識を高めていくことが最も大事になってきます。
5. 生産性を向上させるためのポイント
製造業で生産性向上を実現するポイントは、以下の4つの手順に沿った対策が有効です。
① 生産性を向上させる目的を確認する
② 業務を可視化し改善を実施する優先順位を決める
③ 具体的な施策を決定する
④ 業務システムやツールを導入する
① 生産性を向上させる目的を確認する
労働生産性をさらに向上させるためには、生産性を向上させることで実現したい会社の未来像を目的としてたて、具体的な目標を設定することが必要です。
例えば、よくあるのが「製品の不良率を翌年は5%削減する」という目標だけを設定しているケースです。もちろん、不良率を削減することは製品の品質を保ちながらコストの削減や生産性向上の実現が期待できるものです。しかし目的なく目標を設定してしまうと、目標達成自体が目的となってしまいそれ以外の部分に目が行きにくくなります。そのため、まずは生産性向上を図ることでどのような企業になりたいのかを定め、それを従業員全員がイメージできる形で決めることが重要です。そのうえで工程ごとに具体的な目標を設定すると、実際にその目標が重要でないことが分かった場合や、実現が難しい目標だと判明した際等に目的が明確であれば目標を素早く変えることもできます。目標は目的を達成するための通過点です。目標に柔軟性を持たせることが目的到達に対して有効は方法です。
② 業務を可視化し改善を実施する優先順位を決める
業務を見える化することは、業務の流れやボトルネックを明確にするためのはじめの一歩です。例えば製造機器の情報等をデータ取得してみると、人の感覚とは違う結果が出ることもあります。またデータ化しにくい事でもマニュアル化をする過程である人の能力に依存していることが分かったり、無駄な作業が発生していたりすることが分かります。このように業務を可視化することで改善の優先順位が分かりやすくなります。また例えばITツールを活用して業務内容をデータ化することで、作業時間や品質、設備故障などの情報を可視化し、データを取得して分析することで具体的な改善策を考えることが可能になります。さらに業務の可視化は改善による効果が分かりやすくなるので改善に踏み切る決定がしやすくなるというメリットがあります。
③ 具体的な施策を決定する
業務の可視化によってボトルネックや業務の問題点が明確になったら、次は具体的な施策の決定が必要となります。
例えば、現場の教育が挙げられます。業務の見える化から「新人の作業ミスが多い」という問題が浮き彫りになった場合、原因を解決するための施策として、業務のアニュアル化や、新人向けの教育プログラムの充実、ベテラン従業員によるOJTの実施などが考えられます。ここで大事なことは解決策を一つだと考えないことです。業務は独立して存在しているのではなく、ほぼすべてが他の業務や作業に関連しています。一つの方法が他の業務に影響することもあります。これだけしとけばよいと考えたり、一つの施策が上手くいかないからとあきらめるのではなく、常に「他に何か方法はないだろうか」と考えて施策を繰り返すことが大事です。
④ 業務システムやツールを導入する
これまでのポイントを踏まえて、現状の社会情勢を踏まえると生産性向上にシステム化やITは欠かせません。ただ、年齢によっては、ハードルが高いと感じる場合もあるかとは思います。また企業によってはITやシステムを使いこなす人材がいないと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし生産年齢人口の減少を踏まえて考えると生産性向上にはIT化やシステム導入は避けて通ることができないのが現実です。
もし自社内では使いこなせないと考える場合は外部人材の活用や外部のサポートを行うことも重要です。
住友電設では、グロサポという製造業を対象とした生産等に関するデータで未活用のデータ(以下、データ)の可視化と、データの具体的な活用方法について、専門家が定期的にアドバイスを行うサービスを実施しています。
■グロサポサービス動画 ※クリックでYoutube動画が再生されます
※グロサポはIT補助金対象ソリューションです。
グロサポ活用の2つの事例を下記のリンクでご紹介します。是非ご確認ください。
事例1:工作機械の稼働率向上を図るためにグロサポを採用
https://www.sem.co.jp/inet/result/detail/2
事例2:より効率的な製造ラインの運用に繋げるためにグロサポを採用
https://www.sem.co.jp/inet/result/detail/1
もちろんこのようなDX化はコストもかかることですが、IT補助金等、政府も中小企業を中心に様々な補助金や助成金で後押ししていますのでまずは生産性向上に向けて目的を立て、具体的に検討をしていくことが大事ではないでしょうか。
6. まとめ
生産性の向上はこれからの製造業で生き残っていくために大事な要素です。特に生産性向上に取り組んでいる企業とそうでない企業では数年で見ると大きな差が出てきます。変化が激しく早い昨今の情勢を考えると、生産性向上に向けて全力で取り組みことが大事になってきます。IT化やツールの活用などは費用も掛かる施策でもありますので、上手く補助金や助成金を活用することも検討しつつ、今できる事からまずは取組んでいくことが大事ではないでしょうか。
今回のポイントを踏まえつつできる事から取り組み、必要な場合は外部リソース等も活用することも検討して企業の持続的な成長につなげていきましょう。


